往診(訪問はりきゅう)後縦靱帯骨化症 83歳男性②
“ピーンポーン”
チャイムを鳴らすとよたよたと杖をついて歩いてくるおじいちゃんが迎えてくれました。
「こんにちは~!」
パンパンにむくんでいる足にすぐ目がいきました。足首は曲がらない、杖を頼りに何とか歩いて来られました。ご自宅を歩くのにも杖が必要なんだなぁと思いました。
治療は腰と頸にお灸、頭に灸頭鍼をしていきました。
週に3回、治療を始めて2週間。
「ココにはりを打ってくれんか?」
肩が痛いから肩にハリをしてくれ。手がしびれるから腕にハリはできないのか?とあちらこちらにハリをしてほしいと要求がありました。それだけ身体の不快な痛みが多くあったようです。本人も思うように動かない足をパンパン叩き、歯がゆい思いをされていました。長年患っている後縦靱帯骨化症は着実に進行していました。後縦靭帯骨化症と診断をうけたのは今から30年前のこと。うつ伏せで腰にお灸、頭に灸頭鍼をしていると、当時のことを思い出しながら話してくれました。
「あの時はなぁ、両腕、頸の痛みがあまりにもきついもんだから、病院に行ったんだよ。
すると、医師から告げられた病気は頸(くび)の後縦靱帯骨化症。驚いたよ。初めて聞く病気だった。今すぐにでも、と手術を勧められた、その当時は手術以外治療法がなくて、手術をしても車イスになる可能性が高いといわれた。大きな仕事を始めたばかりだった私が手術をしてもし車イスの生活になったら、と考えたら恐ろしくて手術はできなかった。薬もなかったから、どうしても痛みが我慢できないときだけ、頸の牽引とマッサージをしてもらいに近くの病院まで行っていたよ。」
「そうですか。大変な思いをされていたんですね。」
病気の進行を止めること、少しでも進行を遅らせることが患者さんと私の目標でした。
鮫島佑梨子